2010年6月5日土曜日

ロッシ解放骨折で長期離脱決定的

MotoGP第4戦イタリアGPのフリー走行2でロッシがハイサイドから激しく転倒、右足首上の脛骨を骨折して欠場となった。骨折は解放骨折という事で、一般人なら全治3か月という重傷。ライダーの場合、同様の症状で6週間でレース復帰した例もあるという事だが、早期復帰出来たとしても数戦に渡る長期離脱は間違いなく、今年のタイトル防衛は事実上絶望と言って良いだろう。

今年は83年の様な歴史に残るシーズンになるだろうという予感の元にこのブログを立ち上げ、1日も早くリアルタイムに追いつきたいと思いつつ、まだ開幕戦の感想も書いていないうちに、違った形で歴史に残るシーズンになりそうな気配になってしまった。

ロッシはどちらかと言うと転倒は少ないライダーだと思うし、ドクターと呼ばれる程の理論派のライダーでもあるので、転倒したとしても限界ギリギリでのコントロールを誤り、わずかに限界を越えてしまったという印象のスリップダウンの様な転倒が多く、500ccクラスのルーキーイヤーに見せた様な派手なハイサイドによる転倒は長い間見せておらず、230戦もの連続出場記録を更新中だったが、その大記録も230戦で途絶える事となった。

どんなに転倒が少ないライダーでも、転倒してもほとんど怪我をしないライダーであっても、まさかあのライダーがというライダーがたった1度の転倒で命を落としたり、ライダー生命を断たれる様な致命的な怪我を追うケースは時々起こってしまう。

これはどんなに優秀なライダーであっても、どんなに幸運なライダーであっても、たった1回の転倒で致命的な結果に陥る可能性があるという事では、全ライダー平等である事を意味していると思う。それだけレースというのは危険なスポーツであるという事をレースに関わる全ての人は、単なるファンも含めて忘れてはならないと思う。

その為には、過剰とも思える程の安全対策、過敏過ぎると思える程の安全への意識というのが必要不可欠だと思う。安全対策や、安全意識というのは、どんなに過剰に思えても過剰という事は決してないものだと思う。

少なくとも今回のロッシの場合は、時間がかかっても復帰してまた一線級で走る事が可能であると思うから、それは不幸中の幸いであると思うが、ロッシ程の大スターでカリスマであっても、大きな怪我から逃れられなかったという事から、多くの事を学ぶべきだと思う。

こうして、我々MotoGPファンは、限定された期間とは言え、想像していたより少し早くロッシのいないMotoGPというのを体験する事となった。

前戦のスペインGPで独走優勝したロレンソは、ウィニングランで、マシンを降りてロッシのパーソナルカラーであるイエローのディレクターチェアに座り、オーロラビジョンを眺めるというパフォーマンスを見せたが、それは「ロッシの座を奪った」という意味であろう。その直後にロッシの身にこういう事が起こったとなると、MotoGPの時代の流れが大きく変わる出来事だという印象を感じざるを得ない。

どんなに転倒しても大きな怪我をしなかったロッシの強運も、ここに来て失われたという印象を持たざるを得ないからだ。

ただ、やはり83年のケニーとフレディの熾烈な争いの様に、今年のロッシとロレンソには歴史に残る熾烈な戦いの末に雌雄を決して欲しかったと思うので、こういう形で今年のタイトル争いの流れが大きくロレンソに傾いてしまったのは残念でならない。ロレンソもこれで今年のタイトルを獲得したとしても心からは喜べない筈だ。実力でロッシを打ち負かして名実共にチャンピオンの栄冠を手にしたかったと思うに違いない。

ただし、ロッシはやはり並のライダーではないと思うし、このままでは終わって欲しくない。今年のタイトルは絶望的だとしても、来年には完全復活して今年に期待していた以上の歴史に残るシーズンを演出して欲しいと思う。

そして、ロレンソ、ケーシー、ダニ、ドヴィ、ニッキーを初めとするMotoGPライダー達には、ロッシのいないMotoGPを決してつまらないものにしない様、素晴らしいパフォーマンスを見せてMotoGPを盛り上げて欲しいと思う。