2010年7月16日金曜日

ロッシ、ブルノで来年の去就を発表予定。その内容は?

ロッシの来季ドゥカティへの移籍が噂となっているなか、解放骨折からわずか41日という驚異的な短さで、ドイツGPから復帰が決まったロッシが、 ドイツGPのプレスカンファレンスで「ブルノで来年の計画を発表出来るだろう」と発言した。


第8戦ドイツGP:プレスカンファレンス


という事は、既にロッシの去就は決まっていて、第10戦のチェコGPでの発表に向けて準備が進んでいるという事だと思う。


では、その内容は噂通りドゥカティ移籍なのだろうか?それとも多くのファンが熱望する様にヤマハ残留なのだろうか?


ロッシのドゥカティ移籍の噂は以前よりあり、それは、一般的にはロッシに自国イタリアのメーカーで走って欲しいというイタリアのファン、イタリアのマスメディアの夢を反映したものだと受け取られ、常に単なるデマとして扱われて来た。


ロッシの怪我による欠場後、イタリアのメディアがロッシのドゥカティ移籍が確定したと報道した時も多くのファンはそれをデマと片付けていた。


しかし、僕はロッシの少なくとも数戦の欠場が決定し、事実上タイトル争いから脱落した時点で、ロッシのヤマハ残留の可能性は極めて少なくなったと感じ、ドゥカティ移籍の可能性も充分あると思っていた。


確かにロッシはヤマハでキャリアを終える事を望んでいると発言していたし、ヤマハもそれを望んでいて、今年のシーズン序盤の段階では来年の体制に付いてロッシの残留が最優先とコメントしていた。


【MotoGP】 ヤマハはロレンソよりロッシ優先、ではドゥカティは?


でも、ロッシは昨年から「同じチームにエースは二人もいらない」とヤマハに自分かロレンソを選ぶ様迫っていた。対するロレンソはロッシと来年以降もチームメイトになる事を歓迎するとコメントしていた。


ロッシが自分かロレンソを選べという要求を通したかったら、少なくとも来年の契約が結ばれる時点までロレンソよりも高いランキングを獲得する必要があっただろう。だから、僕は今シーズンが始まる前から、ロッシとロレンソの内、タイトルを獲るかランキング上位の者がヤマハに残り、もう一人はヤマハを去る事になるのは避けられないだろうと思っていた。


だからロッシの長期欠場でロレンソのタイトル獲得が濃厚になった時点で、ロッシがヤマハを去る可能性が高まったと感じたのだ。移籍するとしたら過去のいきさつからしてホンダに戻る事は考え難い。更にホンダはケーシーの移籍も決まり、ダニとドヴィの残留も濃厚。スズキは他の3メーカーに比べて戦闘力が低過ぎる。移籍先はドゥカティしか考えられないだろう。


特にケーシーのホンダ移籍決定が決定的だった。その発表の直後ロッシのドゥカティ移籍報道は信憑性が高い物に感じられた。


ただ、僅かながらロッシのヤマハ残留の可能性があるとしたら、それはロッシが前言を撤回し来年もロレンソとチームメイトになる事を受け入れるという事だろうと思った。今年のタイトル争いでロッシがロレンソに破れたとしても、それがロッシの怪我が原因であり実力で負けた訳ではないのだから、来年もう一度同じマシンでロレンソと最終決着を付ける為にヤマハに残るという選択もあり得ない事ではないと思っていた。


しかし、それもヤマハがロッシに来年の契約交渉で年棒の半減とロレンソ放出の条件は飲めないと伝えた事にロッシが激怒したという報道でほぼ可能性がなくなったと思った。


何故ならロレンソの方はタイトルを獲得して減棒という事はあり得ないだろうし、通常なら多少なりともアップせざるを得ないだろう。ロレンソとロッシの二人と契約するにはロッシの年棒を減額するしかないという事は、事実上ロレンソをエースとしてロッシはセカンドライダー扱いになるという事を意味する。ロッシのプライドがそれを許す筈がない。


ただ、どう判断したら良いのか迷ったのが、怪我をした当初「来年の契約の為に何かを証明する必要はない」と言って、充分休養して万全になってから復帰すると言っていたロッシが、怪我から僅か41日で無謀とも思える様な早期復帰を決めた事だ。


どう考えても復帰を焦っている様に感じる。焦っているとしたら、それはヤマハからの来季の契約の条件提示と無関係とは思えない。


ロッシは早期復帰してロレンソに勝つ事でタイトルとは関係なく、自分こそがNo.1ライダーと証明する事で、ヤマハのその考えを変えさせて自分が残留しロレンソを放出するという決定をさせたいと考えているのだろうか?


そしてロッシは復帰に当たり、「ドイツGPとアメリカGPではまだ勝つ事は出来ないだろうが、シーズンの残り数戦で勝つ為にはその2戦に出場する事が重要」と説明していた。


V.ロッシ、復帰の決断は水曜の検査次第


しかし、今回のブルノでの来季の去就発表予定という発言から、早期復帰の理由がヤマハとの契約交渉の逆転を狙ったものではない事がはっきりした。ブルノで発表する予定で準備が進んでいるという事は、ロッシの去就はもう決まっているという事で、シーズン後半の数戦に勝つ為に早期復帰を決断したのは、来季の契約交渉とは無関係という事になる。


ならば何故、ロッシはシーズン後半の数戦に勝つ事に執念を燃やし、まだ松葉杖で歩いている様な状態でサーキットに戻って来たのだろう?


それを考えると、ロッシの来季に向けた決断がヤマハ残留かドゥカティ移籍なのか分かる様な気がする。おそらくロッシはドゥカティに移籍する事を決断したのだろう。


何故なら、もしロッシがロレンソとチームメイトになる事を受け入れて、ヤマハに残留する事を決断したのなら、ロレンソと同じマシンに乗ってどちらが本当に速いかを証明するのは完全に怪我が癒えた来年でも遅くはない。ロッシがどうしても今年のシーズン後半にロレンソとの同メーカー対決に決着を付けたいと考えているならば、来年はもう同じマシンには乗らないという事を意味しているのではないだろうか?


ロッシはロレンソと同じマシンに乗る事が出来る最後のチャンスである今年のシーズン後半にロレンソとの最終決着を付けたいと思っているのではないだろうか?そして、今年のタイトルとは無関係にヤマハに乗って1番速いのは自分だという事を、ロレンソ本人、自分のプライドを傷つけたヤマハ、そしてファンに見せつけてから、心置きなくドゥカティに移籍したいと思っているのではないだろうか?


ロッシが欠場した直後なら、多くの人が怪我さえなかったら今年もタイトルを獲得するのはロッシだったに違いないと思ったかもしれない。しかし、ロッシの欠場の間にロレンソはヤマハライダーとしてローソン以来の3戦連続ポール・トゥ・ウィンというロッシも達成出来なかった記録を打ち立ててしまったし、何よりロッシが欠場する以前の3戦の成績はロッシの1勝2敗とロッシはロレンソに負け越している。


このまま圧倒的な強さでロレンソがタイトルを獲得したら、多くの人はロッシが欠場しなくてもロレンソは充分タイトルを獲れるだけの実力があったんだという印象を持つかもしれない。


ロッシにはそれが我慢出来なかったに違いない。そして、シーズン後半にロレンソを圧倒的強さで敗りヤマハ最速は自分だという事を証明する為に全身全霊を注ぐ覚悟で早期復帰を決めたのではないだろうか?


一時は今シーズンに期待していたロッシとロレンソの最終決着がロッシの欠場という形で見られなくなった事を残念だと思ったのが、逆に怪我による欠場がなかった場合より熾烈な戦いを見られる事になるのかもしれない。


万が一にもロッシが再び転倒して怪我を悪化させる様な事はあって欲しくないが、ロッシはそういうリスクも覚悟した上でレーサーとしてのプライドを賭けてシーズン後半戦に臨んで来るのだろう。


ロッシがその覚悟なら、レースファンとしてはそのレース史に残るに違いない大勝負をロッシの無事を祈りながら見守るしかないだろう。